「自社のコーポレートサイトを多言語化して世界中の顧客にアピールしたい」
「でもどこから手をつければいいかわからないし、信頼できる編集パートナーに丸ごと任せたい」
——そんな思いはないでしょうか。
ですが、多言語化が企業のブランディングや売上にどう役立つかを理解していないと、翻訳を単なる「言語変換サービス」としか捉えられず、十分な成果が得られないことがあります。
そこで今回は、多言語化で得られるメリットを初心者でもわかりやすく整理しつつ、品質確保の要点、ローカライズやSEO戦略まで徹底的に解説します。自社サイトの多言語化を検討する際、あるいは外注する際に必ず役立つ情報を厳選してご紹介します。
本記事を読めば、多言語化の重要性とどのような恩恵があるか再確認できるだけでなく、どこに投資し、何を基準にプロダクションを選ぶべきかがはっきり見えてきます。実は、徹底したプロセス管理こそが海外ユーザーの心を掴むカギなのです。
それでは、多言語化の重要性を紐解いていきましょう。
なぜ今、多言語化が必要なのか
世界人口の約80%は英語を流暢に話せないと言われています。私たち日本人も何年間も英語を学習しているのに、翻訳なしでは映画を楽しめなかったり、英語サイトは日本語に変換してしまう方は多いのではないでしょうか。
この80%という数字は意外なことかもしれませんが、言い換えると英語版サイトだけでは、私たちのような潜在的なユーザーの大半にアプローチできないのです。
多言語化のメリット
顧客との接点拡大
日本企業がベトナムやフランス市場へ進出する場合、英語だけでは情報が十分に伝わらないことがあります。現地言語で情報提供することで、問い合わせやコンバージョンの機会が増え、売上拡大につながります。
国際的な信頼構築
「自分の母国語で情報が得られる」という安心感は、海外ユーザーからの信頼と好感度を高めます。言語の障壁を取り除く姿勢は「この企業は私たちを重視している」という印象を与え、ブランド認知を促進します。
競合他社との差別化
競合が先に多言語対応している場合、未対応の企業はユーザーから軽視される傾向があります。逆に、早期に多言語対応を実施すれば、新規市場で先行優位性を確保し、「ローカルユーザーを尊重する企業」というポジティブなイメージを築くことができるでしょう。
実例として、デンマーク拠点のフィンテック企業Pleoは、コーポレートサイトを18言語に翻訳し、各国の商慣行や文化に合わせたコンテンツを展開しています。この戦略によりヨーロッパを中心に急速にユーザー数を伸ばしています。
ブランド認知とユーザー安心感の両立
多言語化は単に「海外向けに情報を提供する」ことではありません。世界中のユーザーに一貫したブランドイメージを届け、共通の価値観を築く重要な取り組みです。
言語の違いを超えて統一されたメッセージを伝えることで、ユーザーは「どの国でも同じ品質と理念を持つ企業」と認識し、安心感を得られます。
さらに、適切なローカリゼーションは顧客への敬意を示し、ブランドへの信頼構築に直結します。言語や文化的要素を丁寧に扱うことで「私たちの市場を理解している」というメッセージを伝え、顧客ロイヤルティを高める効果があります。しかし、この過程で失敗すると深刻な影響を及ぼすことも忘れてはなりません。
日本語で何気なく使っている言葉が実は…という例も存在するのです。
中国「紅旗」:グローバル市場での地位と多言語対応の課題
紅旗(Hongqi)は1958年に設立された中国の高級自動車ブランドとして国内での地位を確立しています。しかし、グローバル展開において多くの課題が多く残る状態です。特にウェブサイトの多言語対応は深刻な問題と言えるでしょう。
多言語対応の主な課題:
- 日本にショールームを開設(2021年大阪)していながら、公式サイトの日本語に対応したサイトが存在しない
- 公式の英語サイトを閲覧する際には、機械翻訳依存のため、機械翻訳の精度によりブランドイメージを損なっている
hongqi-auto.comより(2025年3月20日時点)
これらの問題は、紅旗が国際市場で高級ブランドとしての地位を確立する上で重大な障壁となっています。中国国内では政府要人や高級官僚向けの伝統あるブランドとして認知されていますが、その高級イメージがグローバル市場では十分に伝わっていません。 hongqi-auto.comより(2025年3月20日時点)
「世界トップレベル」と謳いながら、「島式製造設備」「マスターレベルの手縫い」「彫刻」「鏡の職人技」などと、顧客の混乱を招くような表記が羅列しています。
基本的な多言語対応ができていないというミスマッチも目立ち、このような状況は製品自体の品質やデザインの良さがあっても、潜在顧客とのコミュニケーションに障壁を作り出しています。
Google翻訳の精度はいかに:OPPAの中国語→日本語の翻訳
OPPOは2004年に中国の広東省東莞市で設立された通信機器・スマートフォンメーカーです。世界スマートフォン市場で第4位のシェアを持つ大手メーカーで、グローバル展開しており多言語のウェブサイトを持っていますが、Google翻訳の精度が浮き彫りになる事例があります。
https://www.oppo.com/jp/より(2025年3月20日時点)
メジャー言語である中国語と日本語間の翻訳でもあるにも関わらず、意味不明のコピーに翻訳されています。そして、日本語対応サイトにはこの「Find X7 Ultra」という商品が見つけられなかったので、正しい情報は顧客には何も伝わらない結果に。
英日翻訳でも課題は見られる
Googleは日本語から英語への翻訳精度の高さをうたっていますが、以下の例から基本的な翻訳ができていなこともわかります。
https://eu.louisvuitton.com/より(2025年3月20日時点)
「Follow us(フォローしてください)」を「私たちに従ってください」と安直なまでに直訳してしまっている例です。SNSが当たり前の2025年の情報かと疑ってしまうほどの精度です。
https://www.cdc.gov/より(2025年3月20日時点)
訳す必要のないアルファベット検索の画面まで訳してしまっている例です。サイトの全体文脈を理解できていなことがわかります。
Google翻訳はサービス開始から新しいモデルを導入を継続して行い、精度の向上をうたっていますが、現状では誰にでも明らかな通りおかしな翻訳はまだまだ目立ちます。
正確な翻訳の重要性とリスク
「機械翻訳ツールを使えば多言語化はすぐに完了する」という考えは、航空機のパイロットが「これくらいなら自動操縦で十分」と言ってコックピットから離れるくらい危険です。翻訳精度の軽視は、ブランドイメージの損害だけでなく、法的問題にも発展する可能性があります。ここでは誤訳がもたらす影響と、機械翻訳のみに依存することのリスクについて詳しく見ていきます。
誤訳が引き起こすブランド毀損と法的リスク
ブランドイメージへの影響
公開された誤訳は長期間残り続けることがあります。SNSで拡散されると炎上のリスクが高まり、「翻訳が不正確=企業体制がずさん」という印象を与え、信頼回復には多大な努力とコストがかかります。
歴史ある観光都市がなぜ?誤訳多発で京都観光案内表示に対する対策
京都市観光協会の調査で約500カ所の外国語案内表示に誤訳が発見されました。AI翻訳への過度な依存や語学人材不足が主な原因です。
VR(仮想現実)で忍者の体験ができる観光施設では「Don’t act up(調子に乗るな)」を「暴れないで」の意味で使用するなど、不適切な表現が訪日客を困惑させました。
誤訳によるブランド毀損
誤訳は単なる意思疎通の問題を超え、歴史ある国際観光都市・京都のブランド価値を損なう深刻な問題です。不正確で粗雑な表記は「品質への配慮が欠ける都市」という印象を与え、精緻な文化や「おもてなし」を重視する京都イメージと矛盾します。長期的には観光客の満足度低下や評判の悪化につながりかねません。
対策の方向性
京都市観光協会は英語表記ガイドラインを公表し、ピクトグラム併用を推奨しています。政府も英語ネイティブの専門人材派遣などで支援しています。今後は単なる表記修正にとどまらず、観光産業全体での品質管理意識の向上と専門人材育成が求められます。観光客の急増に対応しつつ、京都の文化的価値を正確に伝える取り組みが不可欠です。
法的・財務的リスク
契約書や製品説明の誤訳が顧客の誤解を招き、損害賠償や契約トラブルに発展するケースもあります。また、公式文書の誤りは国際的な信用問題となり、株価下落など財務面への悪影響も考えられます。
誤訳だけではない!翻訳にAIを使用するリスク
生成AIは翻訳ツールとして普及していますが、単なる誤訳以上のリスクが存在します。が指摘する通り、AIを翻訳に活用する際に注意すべき重要な問題点があります。
- 虚偽情報の自信満々な提示: 生成AIは「平気で大嘘をつく」ことがあり、存在しない情報や誤った歴史的事実を確信的に回答します
- 計算ミス: 意外にも単純な計算が苦手で、基本的な掛け算でさえ間違えることが頻繁にあります
- 情報の古さ: ChatGPTの無料版は2025年現在のデータは学習していないなど、最新情報が反映されない問題があります
- 個人情報漏洩リスク: 多くのAIは入力内容を学習データとして使用するため、機密情報や個人情報の入力は危険です
- 著作権侵害の可能性: AIが生成した文章が既存の著作物に類似していた場合、著作権問題に発展する恐れがあります
これらの問題は生成AIの仕組みに起因しています。例えば、生成AIソフトにPDFをアップロードして文章を要約させたとしましょう。翻訳自体の精度以上に、その要約自体に誤りがないのか十分に確認する必要があります。
機械翻訳と人力翻訳の使い分け
AI技術の進歩により、Google翻訳やDeepLなどの機械翻訳(MT)の精度は向上していますが、まだ課題が残っています。
DeepL社の発表によると、2024年7月に世代言語モデルを実装し、プロの翻訳者によるブラインドテストでGoogle翻訳の1.3倍、ChatGPT-4の1.7倍、Microsoft翻訳の2.3倍の高評価を獲得。ですが、マーケティングのローカリゼーションが的確でなかったり、不自然な点もまだ見受けられます。
機械翻訳の強み
- 速度:大量のテキストを迅速に処理できる
- コスト:人件費を抑えられるため、大量の文章処理に経済的
機械翻訳の課題
- 言語のニュアンス:慣用句や文化的表現の翻訳が困難
- 曖昧さ:複数の意味を持つ単語の正確な解釈が文脈依存
- 専門用語:技術・科学分野の専門語彙の翻訳には広範な知識が必要
- 多義性:一つの単語が複数の意味を持つ場合の正確な選択が複雑
- 構文と文法:複雑な文構造の正確な翻訳は依然として課題
- リソースの少ない言語:訓練データが少ない言語では性能が制限される
- ドメイン適応:特定分野(法律・医療・技術)への適応には追加作業が必要
重要なコーポレートサイトの翻訳には、「機械翻訳→プロ翻訳者によるポストエディット(編集)」というハイブリッドアプローチが推奨されます。
ポストエディットがもたらす価値
ポストエディットは、機械翻訳の出力を人間が修正・改善するプロセスです。AIが高速で訳出する一方、言葉のニュアンスや文脈理解には限界があります。人間の編集者が機械の誤りを正し、自然な表現に整えることで、スピードと品質を両立。テクノロジーと人間の専門性を組み合わせた、現代の翻訳ワークフローにおける重要な品質保証ステップです。
速報性と正確性の両立
SNS投稿やユーザーレビューなど大量で短納期のコンテンツは機械翻訳を基本に最小限の編集を行い、コーポレートメッセージや公式発表など重要度の高いコンテンツには専門翻訳者による丁寧な校正を実施します。この使い分けにより、全体の効率と品質のバランスが取れます。
ブランディングの一貫性確保
企業独自の「ブランドガイドライン」や「用語集」を参照して機械翻訳結果を人間が調整することで、ブランドメッセージや専門用語の一貫性を保てます。特に製品名やキャッチフレーズなど、微妙なニュアンスが重要な要素には、このアプローチが効果的です。
【出典】Top 7 challenges in machine translation – 2025
【出典】Salute the Classic: Revisiting Challenges of Machine Translation in the Age of Large Language Models
多言語サイト構築がもたらすSEO効果
多言語化は海外ユーザーの利便性向上だけでなく、検索エンジン最適化(SEO)面でも大きなメリットをもたらします。適切な設定を行えば、国際的な検索からの自然流入が増加し、ビジネス機会の拡大につながります。
HreflangタグとURL構造の最適化
Hreflangタグの役割
Hreflangタグは、検索エンジンに「このページは同じ内容の別言語版です」と伝えるHTML属性です。これがないと、多言語ページが重複コンテンツとみなされ、検索ランキングが低下するリスクがあります。
URL構造の工夫
多言語サイトでは、ユーザーと検索エンジン双方に分かりやすいURL設計が重要です。例えば:
このように言語別のディレクトリ構造にすることで、検索エンジンのクローラー効率が向上し、サイト管理も容易になります。
現地語キーワードの重要性
日本語のキーワードを単純に翻訳しても、現地ユーザーが実際に検索する言葉と一致しないことがあります。
ローカライズされたキーワード戦略
- 直訳に頼らず、現地市場での実際の検索語を調査
- 製品カテゴリやキャッチコピーも文化的背景に合わせて調整
成功事例:REVIEWS.io社
英国のレビュー管理プラットフォーム企業REVIEWS.ioは、ドイツ語サイト立ち上げ時に現地特有のキーワード最適化を徹底した結果、ドイツ語圏からのオーガニックトラフィックが120%増加し、コンバージョン率も20%向上しました。
さらに、REVIEWS.ioはWeglotとの統合により、自社のeコマースクライアントがレビューを複数言語で表示できる機能を提供。グローバル展開を図る顧客企業のコンバージョン率向上にも寄与しています。
ユーザー体験とSEOの相乗効果
直帰率の低下とSEO評価向上
母国語コンテンツはユーザーにとって理解しやすいため、サイト内をより深く閲覧する傾向があります。これにより直帰率(最初のページをすぐに離脱する割合)が下がり、検索エンジンに「ユーザーにとって価値あるサイト」と評価されるシグナルとなります。
コンバージョン率の向上
問い合わせフォームや購入プロセスをユーザーの母国語で提供することで、ストレスなく行動に移せるようになり、コンバージョン率が上昇します。特にECサイトでは、言語の障壁がないことが売上に直結します。
【出典】REVIEWS.io
ブランド信頼を高めるローカライズ戦略
「翻訳」と「ローカライズ」は異なる概念です。単に言語を置き換えるだけでなく、現地の文化、慣習、心理的背景まで考慮するのがローカライズです。ユーザーのニーズを深く理解した対応を行うほど、ブランドの受容度は高まります。
ローカライズが与える感情的価値
母国語サポートの効果
コモン・センス・アドバイザリーは、8 か国で 2,430 人を調査した結果によると、「母国語で情報が提供されている製品を購入する可能性が高い」と回答した人は72.4%に達します。
また、消費者の 56.2% は「母国語で情報を入手できることが、商品やサービスの価格よりも重要である」と回答していることからも、言語の壁のないサポート体制はそれ自体が大きな価値となり、顧客が継続して選ぶ理由になるということを明確に表してしるでしょう。
競合が少ない市場での先行者メリット
差別化要素としての多言語対応
まだ多言語化があまり進んでいない市場(例:中東地域の一部言語など)に早期に対応すれば、「この企業は私たちの国に真剣に向き合っている」と高く評価されます。これにより強い信頼関係を築き、競合が参入する前にローカル市場でのファン獲得が可能になります。
長期的なブランドロイヤルティの構築
現地の言語や文化に根ざしたプロモーションを継続することで、顧客との結びつきが強まり、ブランドロイヤルティが向上します。口コミやSNSでの自然な拡散が生まれ、効率的なマーケティング効果も期待できます。
古都に根付く日本流:ユニクロローマ店の共創マーケティング例
ユニクロは2024年4月、1922年建造のアールヌーボー様式ガレリア内にローマ店をオープン。イタリア2店舗目となる同店では、建築的調和を重視した設計と地域文化との融合を実現しています。
店内にはローマのシンボルであるベスパを展示し、現地アーティストとのコラボ商品を展開。さらに地元書店の漫画コーナーや地元仕立てスタジオ監修のリペアサービスを設置するなど、「ロマニタ(ローマの生き方)」を取り入れたローカライズを徹底。
また開店前から複数の地域団体とイニシアチブを開始し、社会・環境・文化活動を通じて地域社会との関係構築を図っています。こうした包括的アプローチは、単なる出店を超えた長期的なブランドロイヤルティ構築の好例といえるでしょう。
【出典】 The Importance Of eLearning Localization For The Success Of Your Global Training Program
【出典】UNIQLO to Open its First Store in Rome in Spring 2024 at the Galleria Alberto Sordi
翻訳品質を向上させる実務的なポイント
多言語化プロジェクトを成功させるには、翻訳者の能力だけでなく「品質管理の仕組み」を整備することが重要です。ここではCATツールやレビュー体制など、翻訳品質を高めるための具体的な方法を紹介します。
CATツールやQAツールの活用
CATツール
Trados、 memoQ、 phraseなどのCATツールは、翻訳メモリに過去の訳文を蓄積し、類似文が出現した際に自動提案することで、一貫性のある訳文が作成できます。また、同じフレーズの再翻訳が不要になり、効率が向上します。
SDL Trados:翻訳支援ツールの分野でリーダー的存在であり、長年の実績
memoQ:ユーザーフレンドリーなインターフェースと堅牢なプロジェクト管理機能を提供
Phrase(旧Memsource):クラウドベースのプラットフォームで、スケーラビリティとユーザーフレンドリーな特徴
こうしたツールを活用することで、例えば企業の定型的な説明文や製品紹介文が複数ページに渡って登場する場合でも、一貫した訳語と表現を保つことができます。翻訳者が変わっても品質のばらつきを抑制する効果もあります。
自動QAチェック
Xbench,、VerifikaなどのQAツールはスペルミスや訳抜け、数値の整合性など、機械的に検出可能なエラーを自動的にチェックします。特に大規模翻訳プロジェクトでは、人的リソースだけでは見落としがちな部分をカバーできます。
Xbench:翻訳業界で高く評価されている多機能で包括的
Verifika:広範なエラー検出機能を持つ堅牢なQAツール
一流の翻訳者でもそこは人間です。見落としが生じる可能性があるため、システマチックなチェック体制は品質保証の要です。例えば、数千ページに及ぶウェブサイト翻訳では、こうした自動チェックが効率的な品質管理を可能にします。
レビュー工程の設定
推奨フロー:多段階レビュー
「翻訳→レビュー(校正)→検証→最終確認」という複数段階のプロセスを設けることで、誤訳や不自然な表現の検出率が大幅に向上します。自社リソースや翻訳会社のサービスを活用し、ダブルチェック体制を確立することが理想的です。
特に多言語サイトの公開初期段階では、念入りなレビュープロセスを経ることで、後の大規模な修正作業を回避できます。初期投資が大きく見えても、長期的には効率的なアプローチと言えるでしょう。
専門部署や現地スタッフとの連携
医療、法務、IT分野など専門性の高い内容では、現地の専門家や関連部署が監修に参加することで品質が向上します。単に「ネイティブスピーカー」というだけでなく、該当分野の知識を持つ専門家によるレビューが、説得力のある翻訳には不可欠です。
例えば医療機器メーカーのウェブサイト翻訳では、医療用語に精通した専門翻訳者と現地の医療従事者による二重チェックが理想的です。このような専門性の高い分野では、用語の誤訳が深刻な結果をもたらすことがあります。
翻訳会社を選ぶ際のチェックポイント
ポリティカルコレクトネス(PC)とネイティブチェック体制
海外では日本以上に表現への配慮(ポリコレ)が重視され、無意識の発言が批判を招くことがあります。また、英語圏内でもイギリス英語とアメリカ英語ではニュアンスが異なるため、現地に最適化した表現が必要です。
日本におけるポリティカルコレクトネスの浸透
日本でもポリティカルコレクトネスの概念が広がりつつあります。日本航空(JAL)は機内アナウンスで「ladies and gentlemen(紳士淑女の皆様)」という表現を使わず、より性別に中立な「everyone(皆様)」や「passengers(搭乗者の皆様)」という言葉に変更しました。
同様に、東京ディズニーランドとディズニーシーでも英語のアナウンスで「ladies and gentlemen」の代わりに現在は「everyone」を採用しています。
試訳とコミュニケーションの評価
大規模プロジェクトを依頼する前に、少量の試訳を依頼して納期、品質、コミュニケーション対応などを確認することをお勧めします。
長期的なパートナーシップを築くには、修正リクエストへの対応力や担当者とのコミュニケーションの質も重要な判断基準となります。
「急遽スペイン語版もリリースが決まった!」などプロジェクト途中での変更や質問柔軟に対応できるかどうかも、良質な翻訳会社の選定基準として重要です。緊急対応が必要な場面でのサポート体制も事前に確認しておくと安心です。
【出典】Political correctness arrives in Japan
翻訳品質が企業の未来を左右する
コーポレートサイトの多言語化は単なる言語置換ではなく、戦略的に取り組むことでグローバル展開の強力な推進力となります。
質の高い翻訳は「この企業は信頼できる」という印象を与える資産です。
一方、不自然な直訳や誤訳は瞬時に企業評価を損ないます。誤訳のあるウェブサイトは、オーダーメイドのスーツにミシンの糸がはみ出しているようなもの—細部の粗さが全体の品質を疑わせます。どれだけ素晴らしい内容でも、その一点で全体の印象が台無しです。
そして信頼性と並んで重要なのが、ビジネスチャンスの創出。多言語化によりHreflangタグや現地語キーワードの最適化で新たな検索流入が増加し売上向上につながります。地域ごとの検索エンジンでの可視性が高まり、未開拓の顧客層へのアプローチが可能になるのです。
また、構築した翻訳メモリや用語集は将来のコンテンツにも活用でき、長期的なコスト削減に貢献する投資となります。適切な翻訳は世界中のユーザーとの架け橋となり、企業の将来に大きな影響を与えます。「多言語化」は単に「情報を伝える」だけでなく「世界の人々と心でつながる」ためのパスポートだという気持ちが品質の高さに繋がっていくかもしれません。